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吟詠と音楽

吟詠の音階

「ドレミファソラシ」は洋楽長調の「音階」ですが、たとえばハ長調でもト長調でも「ドレミファソラシ」と歌うことができます。同じドレミファソラシで歌っても実際の声の高さは違います。

吟詠の音階は五音階で、「ミファラシド」と歌うことができます。
吟詠には「調」というものはなく、その代わりに「本数」があります。
本数は半音程の差が1本の差になります。

 吟詠の本数
皆が共有する音階があっても、音階の核となる音(主音とか宮音と呼ばれる音)の高さがまちまちでは一緒に歌ったり演奏したりすることができません。
主となる音の絶対的な高さを皆が共有する必要があります。
吟詠においても、近代以降世界に普及している「平均十二音律」という音律を用いるようになりました。このことによって吟詠も洋楽など他のジャンルとのコラボレーションが可能になったのです。

平均十二旋律は1オクターブを12等分します。このことによってすべての音が等しく半音程で並びます。
ピアノの鍵盤には、たとえば「ラ」の音は低いラから高いラまでいくつもあります。その中のおよそ中央あたりの高さの「ラ」を440ヘルツという音高に決めると、これを基準にすべての音高に絶対的な音高が必然的に決まるわけです。
440ヘルツの高さは洋楽ではAと呼びます。Aを主音にする音階がA調あるいはイ調です。
吟詠ではAとはいわず「一」と呼びます。この高さを主音にする吟詠の音階が「1本」になります。半音程高い音階は「2本」ということになります。
「11本・12本」は実際には1オクターブ低く吟じられ、それらは「水2本・水1本」と呼ばれます。


 
 吟詠の基本的な音階は「都節音階」と呼ばれる五音陰音階です。吟詠8本の音階を五線譜で表すと次のようになります。「三」とか「五」は洋楽でいう階名です。



吟詠1本の場合は次のようになります。
 
日本の5音階にはいくつか種類があります。
それぞれの音階の成り立ちに関する研究として上原六四氏のものが有名ですが、昭和に入って小泉文夫氏の比較音楽学に基づく新説が誕生しました。



 音楽友社「新音楽辞典より抜粋」
  従来の分類法によると、雅楽の音階と俗楽の音階に2大別し、前者を律音階(旋法)・呂(りょ)音階(旋法)、後者を陽音階(旋法)・陰音階(旋法)にそれぞれわけていたが、小泉文夫がその著「日本伝統音楽の研究」に独創的な音階論を提唱して以来、日本伝統音楽の音階に対する考え方の転換期が到来した感がある。小泉によると、従来のオクターブを単位とする考え方を改め、テトラコルドを単位とするもっとも基本的な民謡音階(第1種)・都節音階(第2種)・律音階(第3種)・琉球音階(第4種)を挙げ、これらが混合した形(たとえば第2種と第1種)で用いられたとしている。
 
 
 
3つの音の並びが1単位になって、それが繰り返されて1オクターブの音階が形成されているのが分かります。
(1)は第1種の連結、(2)は第2種の連結、(3)は第3種の連結による音階です。

小泉氏によると、パターン(1)が日本の民謡でもっとも多い型で、終始音が4度の関係にあるのが特徴です。
(2)と(3)では、終始音は5度の関係になっています。
は終始音に使われる音
※日本音階には、主音となる音が複数存在し、小泉文夫氏は「核音」と呼んでいます。

都節音階は、江戸時代の邦楽の代表的な音階となったもので、吟詠もその音階を使用したと考えられます。