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手記

 
  果たせなかったこと
  邦楽作曲家・船川利夫先生が逝去されてから早九年が過ぎました。私がシンセサイザーを使って吟詠の伴奏曲を手掛けはじめた頃、すでに船川利夫先生は格調高い吟詠伴奏曲を数多く発表されていました。
東京などで行われる吟剣詩舞の大会やテレビ撮りなどでお会いできる度に吟詠伴奏に関するお話を聞かせていただいていたのですが、ある時、船川先生がシンセサイザーにも大きな関心を持っておられることを知りました。単なる興味だけではなく、ご自身でシンセサイザーを使うことにまで挑戦されていた事には驚きを覚えました。一度だけ私の仕事場までお越しになったことがあり、それ以来、先生とはシンセサイザーに関する話題が増えました。シンセサイザーの使用法などについてのご質問のお電話も時折いただいたりするようになりました。
正確な時期は覚えていませんが、先生から一緒に吟詠伴奏曲を作りませんかという有り難いお誘いをいただきました。私が先生の近くに住んでいたとしたら喜んでお受けしたと思います。現在ではインターネットを使って容易に共同作業が出来るようになりましたが、当時は作曲ソフトや音源などの機能も発展途上であり、先生のご提案を成功させるには私が機材を持ち込み作業を進める必要がありました。
しかしそれは物理的にも時間的にも困難なことでしたので残念ながら断念せざるを得なかったのです。
    2017.11